昨日に続きカンボジアのアンコール遺跡群の一つ「タ・プローム 1」の続きです。このガジュマルの大木も遺跡の屋根を破壊しつつあります。
下の写真は何かの像の頭部がガジュマルの木に飲み込まれつつあります。そのままほっとけば何十年か後には見えなくなってしまうかもしれません。過去の栄光の幕を閉じようとしているのかもしれません。
さて下のビーナス像(デバター)ですが、注目すべき点があります。クイズです。今までにアンコールワットとアンコールトムのビーナス像(デバター)を見てきましたが、それらとの違いが判るでしょうか?
ヒントは足の向きに注目してください。答えは以下です。
アンコールワットでは像は正面向きに対して足は90度横を向いた不自然な姿です。アンコールトムでは足はちゃんと前を向いています。そしてこの上の像では90度横でなく少し前向きになっています。つまり像の彫の深さの違いが表れているわけです。それは像の製作年代の違いになっていると思います。
アンコールワットは12世紀前半、タ・プロームとアンコールトムは12世紀後半ですがアンコールトムのほうが規模はとても大きいので出来たのは13世紀に入ってからです。結局、像の製作年代は最初にアンコールワット、次はタ・プローム、最後がアンコールトムでその順番に像の彫の深さが深くなっていきます。面白いですね。古代でも人間の仕事は進化していることが分かります。
上の写真も下の写真もガジュマルの木が遺跡を飲み込んでいきます。もし人類が滅びたなら今ある現代都市もこういう姿になっていくのでしょう。
下の写真は比較的崩壊が少ないところです。でも木の根が積み石の隙間に入っていって太くなると崩壊が始まります。人間が精魂込めて築き上げたものも、いとも簡単に壊されていきます。そこがこの遺跡の特徴というか意義があるところだと思います。他のほとんどの遺跡は当然見物が主で過去を見ますが、この遺跡では過去はもちろん未来まで思索が広がります。アンコール遺跡群に行きましたら、是非この遺跡に行くことをお勧めいたします。
さて最後に不思議なものをお目にかけましょう。この遺跡の近くに小川が流れていました。川底はミズゴケで覆われています。そして何やら球体の植物?があるではありませんか。「エ? マリモ? あれは寒い北海道の阿寒湖でしょう? この熱帯原生林にあるの?」持ってくることは出来ないし、謎はいまだに謎です。
2017年3月20日 記
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